無症状のうちに病気の芽を摘むという予防医学の観点から、がん検診の意義は十分理解できるかと思います。検診を受けるにあたっては、その利益(benefit)と不利益(harm)の両方がある事を知っておく必要があります。
利益には、早期発見と救命効果があり、異常なしの結果の場合には安心が得られます。ただ、検査には限界(異常所見を指摘できない) があって全てのがんを検出できるものではない点を理解しておく必要があります。ですので、精密検査にならなかったとしても自己チェックの習慣は続けていただきたいと思います。
そして、不利益としては、がんではないのに要精密検査となること(偽陽性)、命にかかわらないがんを発見してしまうこと(過剰診断)があり、結果的に必要のない検査や治療を招く可能性がある点、心理的あるいは金銭的負担をしいてしまう点、精密検査による偶発症(身体的負担をきたす合併症)をきたす可能性があります。
これらを知った上で、利益を最大限享受できるよう検診に臨むことをお勧めします。
提供者は利益を最大に不利益を最小になる様に精度の高いがん検診を提供する努力を続けること、受診者はそれを理解して定期的に受診することでがん検診の意義が高まります。