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お知らせ

新薬情報~トルカプ:Truqap

閉経後のHR陽性HER2陰性の転移再発乳癌に対する一次治療として、非ステロイド性アロマターゼ阻害薬とCDK4/6阻害薬の併用療法が強く推奨されています。この治療を行った場合、長期に奏功していても治療抵抗性が生じてしまうことがあり、二次治療としての最適な治療法は確立していないのが現状です。乳がんの病勢進行に関わる重要な細胞内シグナル伝達経路として、エストロゲン受容体 シグナル以外の経路の一つにPI3K/AKT/PTEN経路があります。この経路の活性化が内分泌療法の耐性機序として関与し、その活性化機構としてPIK3CA 、AKT1 、PTENの遺伝子変異が知られています。

トルカプ (一般名:カピバセルチブ) はAKTを選択的に阻害する世界初のAKT阻害剤で、このPI3K/AKT/PTEN経路を抑制することにより抗腫瘍効果を示すものです。CAPItello-291試験という臨床試験の結果、PI3K/AKT/PTEN経路の遺伝子変異を有する乳がん患者において、トルカプとフェソロデックスの併用療法が、フェソロデックス単剤療法と比較し、病勢進行または死亡のリスクを50%低下させることが示され、2024年3月26日に製造販売承認が得られたところです。

使用にあたっては、コンパニオン診断として、FoundationOne CDx によるPIK3CA、AKT1又はPTEN遺伝子変異を確認する必要があります。上記臨床試験では、対象者の約40%の方に少なくとも1つ以上の遺伝子変異が確認されています。使用方法は、フルベストラントとの併用において、 1回400mgを1日2回、4日間連続して経口投与し、その後3日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す形です。試験では下痢、悪心、高血糖、発疹などの有害事象が認められていました。薬価は未定ですが、おそらく月50万円程度と高額なものとなりそうです。治療選択枝が、また一つ増えることになります。


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