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お知らせ

浸潤性乳癌の超音波画像でわかること

  • morishima4
  • 10月14日
  • 読了時間: 3分

超音波検査で、乳がんはどう見えるのか?外来でよく質問されます。がんにもいろいろか顔があるので、一言では難しいとしか言えません。ただ、大まかには説明することはできます。

専門的になりますが、過去に学会で報告した内容を記載します。

乳房超音波画像は病理標本のHE染色(形態学)に音響学的特性を加えた形で描出されており、超音波組織特性を理解することが大切で、癌の進展発育とその性質を考慮することで、より深い診断に至ることができます。

非浸潤癌が基底膜を破ると浸潤癌となり、多くは腫瘤を形成しながら増殖します。血流は増加し、硬度も増します。はじめは乳腺内に存在しますが、脂肪層にまで及ぶと、前方境界線断裂や境界部高エコー像(ハロー)の所見が明らかになります。

超音波組織特性から、腫瘤の組織構成を推定することができます。後方エコーの強度は、腫瘤内部の超音波の吸収散乱減衰の程度によって変わります。繊維成分を多く含む癌(従来の硬性型、浸潤性小葉癌など)では減弱し、細胞成分が豊富な癌(従来の充実型)では増強します。内部エコーのエコーレベルは、腫瘤内部での後方散乱の強度で表現さます。後方散乱を打ち消しあってしまう程に細胞が密に存在する場合(従来の充実型、従来の髄様癌、悪性リンパ腫、従来の硬性型の中心部など)では、極めて低いエコーレベルとなり、粘液癌のように適度なサイズの線維隔壁に囲まれた粘液湖が集合した構造の場合には、ちょうど後方散乱が加算される格好となって高いエコーレベルを呈します。

また、腫瘍の性質そのものが発育形態を規定すると考えると、サブタイプと病理組織像と超音波画像との相関を見出することもできます。

Luminalサブタイプは、ホルモン依存性のため間質細胞の関与が必要で線維成分が豊富な浸潤癌と相関し、超音波画像では浸潤発育型(不整形)・後方エコー減弱・ハロー・血流は少なめ・*型の貫入血管・ES5の所見を呈します。Non-luminalサブタイプは、癌細胞単独で増殖できるため間質の少ない細胞成分が豊富な浸潤癌と相関し、超音波画像では膨張発育型(円形、分葉形)・後方エコー増強・血流は豊富・π型の貫入血管・ES4の所見を呈します。このパターンの場合、術前化学療法の奏功例が多い傾向があります。HER2サブタイプは、増殖が旺盛で特に管内に広がりやすくコメドタイプの乳管内成分を含む乳管内成分優位の浸潤癌と相関し、超音波画像では乳管内発育型(低エコー域)・点状高エコー・広範囲(区域性)の所見を呈します。温存術の切除範囲には注意を要します。

特殊型については、浸潤性小葉癌では塊を作らずに浸潤すること、扁平上皮癌では嚢胞変性を伴うことがあるなど、各組織型の特徴を知っておくことが大切です。

超音波画像と組織像や腫瘍の性質の相関を読み解くことで、診断に加えて、手術や薬物療法といった治療に結び付く情報やヒントを得ることができます。

こんな考えで検査しています。少しでも参考になれば幸いです。

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