30歳から39歳に発症するがん種の中では乳がんの頻度が一番高く、 15歳から39歳のAYA (Adolescent and Young Adult)世代発症の乳がんでは、様々な配慮や対応が必要です。(「AYA世代の乳がん」については2023/7/7のブログも参照ください。)
特に、妊娠については多くの課題があります。多くの研究結果から、治療後の妊娠出産は、再発リスクを増やさないとされています。また、胎児への異常が起こる頻度は高くならないともされています。
薬物治療によって妊娠ができなくなる可能性があるため、妊娠希望がある場合には、治療開始前に受精卵凍結あるいは未受精卵凍結などの妊孕性温存対応を検討する必要があります。治療後の妊娠については、毒性回避のため、抗がん剤や抗HER2療法剤は数回の月経を経る6-7ヶ月、タモキシフェンは9ヶ月の避妊期間が必要とされています。
特にタモキシフェンについては、その治療が5年-10年となるため、治療完了時点で妊娠適齢期を過ぎてしまう問題があります。そこで、妊娠出産のためにタモキシフェン内服を一時中断する方法の安全性と妊娠評価を検証する臨床試験(POSITIVE試験)が行われ、その結果等をふまえ、日本がん・生殖医療学会からステートメント(2024/10/30)が公表されています。その概要は、「一定期間タモキシフェンを内服したのちに、最長2年として内服を中断して妊娠出産を試みる場合、短期的な予後への影響はないものと考えられる。タモキシフェンの内服を中断し自然妊娠を試みたり採卵したりする場合、最終投与からの望ましい避妊期間を、添付文書に従い9ヵ月とすることを推奨する。しかし、タモキシフェン内服前に妊孕性温存療法として採卵され、体外で凍結保存された胚や未受精卵を用いて妊娠を試みる場合は、すでに遺伝毒性は回避されているため、最終投与からの望ましい避妊期間は発生毒性のみを考慮し、3ヵ月とすることは許容されると考える。また妊娠・出産後や中断が2年を超えた場合には、速やかにタモキシフェンの内服を再開することを強く推奨する」となっています。
しっかりと情報共有をしていきたいと思います。