AYA世代のうち30歳から39歳に発症するがんとしては、乳がんが一番多くみられます。がんの治療が第一優先であることは基本ですが、妊娠可能な若年の女性が乳がんになった場合、将来の妊娠・出産は大きな問題となります。
がんの治療によって妊孕性(妊娠するために必要な能力)がダメージを受けることがあるため、治療前に将来の妊娠を見据えた妊孕性の温存(未受精卵子凍結や受精卵凍結など)を考えることも大切です。
乳がんの治療後の妊娠・出産・授乳については、乳がん再発の危険性を高めたり、胎児の異常や奇形のリスクも高くならないことがわかっています。
但し、ホルモン療法のタモキシフェン内服中は、胎児への影響を考慮して妊娠しないようにする必要があります。内服期間は5-10年と長期になるため、治療終了まで妊娠を待機すると妊娠機会を失いかねません。そこで、妊娠を希望する女性を対象に、「術後18ー30ヶ月間のホルモン療法を受けた後、最長2年間の休薬期間中に妊娠・出産してもらい、出産後にホルモン療法を再開する」という治療法の安全性と妊娠転帰を検証する臨床試験(POSITIVE試験)が行われ、追跡期間中央値41カ月の時点で 、短期的な乳がん再発率は妊娠のために治療を中断しなかった女性と同程度であり、多くの患者さんが妊娠して健康な赤ちゃんを出産したという結果が報告されています。
その他、放射線治療を行なった温存乳房は乳汁産生ができないことやHBOCの検査の保険診療対象となることなど伝えておくべきことがたくさんあります。
若い乳がんの患者さんには、より良く治るためにPOSITIVEに治療に臨んでほしいと思います。
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