今回は、専門的な内容です。非浸潤性乳管癌(DCIS)の超音波とマンモグラフィの画像所見について、その発生から考えてみます。
大部分のDCISは終末乳管-小葉単位(TDLU)の上皮に発生し、基底膜に囲まれた空間内に増殖しながら、歪みを伴いながら、小葉内や小葉外乳管へ伸びていきます。空間内での増殖パターンは、コメド型、篩状、微小乳頭状、充実性などとさまざまです。充満した小葉と小葉外乳管は、サイズアップして、超音波では後方散乱が少なくなり、通常の小葉よりも低エコーの小塊を呈するようになり、狭い範囲で管内に充満し集蔟すれば、腫瘤(Mass)を形成します。塊としてX線吸収が増せば、マンモグラフィで濃度上昇(FAD~腫瘤)を認めます。ゆっくりあるいは早い時間経過で、腺葉内に広がれば区域性に進展し、超音波では小結節が複数個並ぶ形か斑状から地図状の低エコー域(Non mass)を呈し、マンモグラフィでは区域性の濃度上昇を呈することになります。伸展不良に伴い、構築の乱れを呈することもあります。そのいずれかの過程で、浸潤能を獲得すれば、基底膜をやぶり小葉あるいは乳管の間の線維組織や脂肪組織へ浸潤して、浸潤癌としての腫瘤を形成します。
DCISは乳管内乳頭腫や放射状瘢痕といった良性増殖性病変などに併存することがあり、その場合は背景病変の形態が画像に反映されます。
管内での増殖が強いタイプは、中心壊死・小葉外乳管への広がりの傾向があります。小葉内乳管の中心壊死による石灰化は、壊死の程度の不均一さから多形性の形態をとり、小葉外乳管に進展した壊死による石灰化は、乳管の鋳型(線状、分枝状)となります。小葉内の閉鎖空間に閉じ込められた分泌物に生じた石灰化は、サイズもより小さく、均一です。サイズとしては、壊死型で数百ミクロン~2ミリ程度、分泌型で数十ミクロン~1ミリ程度です。壊死型や分泌型石灰化は、管内での増殖形態と形成までの時間経過の影響を受け、石灰化所見のみで、濃度上昇や低エコー域・腫瘤を呈さない場合もあります。装置の進歩により、超音波でも石灰化そのものを充分とらえられるようになってきています。
臨床的に異常乳頭分泌を呈して単一の乳管拡張の所見のみのケースや嚢胞内腫瘍として嚢胞内の乳頭状病変を呈するケースもあります。
発生起源、管内の増殖性病変の状態、石灰化の有無などにより、DCISの超音波やマンモグラフィの画像はさまざまなバリエーションが生じます。
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